【公務執行妨害】のほとんどは,警察内で『公務失敗(失態)妨害』と言われています。

最近,警察官が交番が襲撃され悲しくも殉職されるなどの残念なニュースをよく目にします。
ここでいう公務執行妨害は,このような殉職された警察官のことを指すものでありませんのでその点はご理解下さい。

こんばんは。あいかわらず毎日仕事で遅い帰宅,休みの日まで出勤と会社に尽くしまくっている松本誠です。

今回は,ニュースなどでよく目にする犯罪,公務執行妨害について記載していきます。
公務員に暴力を振るった,職務の邪魔をしたなどが簡単に言えば公務執行妨害です。今回の内容は公務員の中でも,警察官に対しての公務執行妨害についてです。略して『コウボウ』です。

実は,その公務執行妨害という犯罪はタイトルにもあるように,ほとんどが褒められるものではなく,悪い事例,失敗事例として警察内部で教養材料として使われることが多くあります。
そのようなことから警察内では『公務失敗(失態)妨害』と称されます。

もちろん,全ての公務執行妨害が失敗妨害ではなく,犯す犯罪者が一番悪いのです。

公務執行妨害罪はどんな犯罪?その要件は?

公務執行妨害罪とは,警察官に対してだけではなく,市役所職員や消防士,公務員の教員などの公務員に対する行為の罪です。
警察官などに対しての殴る蹴るなどの暴力に対してはもちろんのこと脅迫や公務の妨害しても公務執行妨害罪に当たります。

刑法95条1項公務執行妨害罪
公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪が成立する要件

公務執行妨害罪が成立する要件は,上記に記載した条文のままですが,大きく分けて3つに分かられます。
それは『公務員』『職務を執行するにあたり』『暴行または脅迫を加える』の3つです。

公務執行妨害罪の成立要件『公務員』

国家公務員・地方公務員(臨時・非常勤含む),みなし公務員,国家・地方議員のことです。

みなし公務員
公務員ではないが,職務の内容が公務に準ずる公共性及び公益性を有しているものです。国に直接雇われているのではなく,あくまで民間会社の社員です。

例えば駐車監視員(緑の服を着て駐車取締りをしているおじさんやおばさん),日本郵便株式会社の社員やや自動車ディーラーなどの指定工場で車検通している真っ最中の検査員などがみなし公務員です。

公務執行妨害罪の成立要件『職務を執行するにあたり』

公務員が職務を執行する最初から最後までのことです。もちろん公務員の通勤時間やプライベート時間は職務外なので成立しません。

また犯人からしてもそれが公務に従事していると常識的に分かっていなければ成立は難しい場合があります。

例えば,警察官で言えば,大阪など大都市の繁華街には,一般人に扮した警察官が紛れ込んでいます。茶髪に髭,ピヤスを装着し,警察官ということが全く分からない状態の警察官です。
その警察官が不審者を見つけて,職務質問してもそこで『警察や』など自分が警察官ってことを伝えなければ相手に全く分からない状態です。
その状態で反撃などを喰らえば場合によっては,公務執行妨害罪ではなく,『暴行罪』となる場合があります

相手が一見して警察官と分からなければ,変な人に絡まれたと勘違いし,咄嗟に暴力を振るってしまう場合もあります。もちろんそうであっても暴力はいけませんが公務執行妨害罪は成立しない場合があります。暴行罪には該当します。

公務執行妨害罪の成立要件『暴行又は脅迫を加えた者』

公務執行妨害罪は,警察官などの人ではなく公務に対する妨害です。公務中の警察官に暴行するのは,警察官の公務を妨害することから公務執行妨害なのです。

『暴行又は脅迫を加えた者』は警察官などの体だけでなく公務に準ずる物に対しての暴行も含まれます。

例えば、飲酒運転の疑いで飲酒量を検知しますが,風船に検知管を繋ぎ飲酒検知を行います。その検知結果を違反者に見せる際に,違反者に割られてしまうことが稀にあります。
こういう場合は,警察官は暴行・脅迫を受けていませんが検知管という証拠品を破壊し,公務を妨害したということで公務執行妨害罪が成立します。

他にも捜索差押(ガサ)で押収した証拠品などの破壊なども公務執行妨害罪に当たります。

公務執行妨害罪は警察組織内では『失敗妨害』と言われることが多い

テレビドラマや警察24時でよく格好良く『公妨で逮捕』と言って被疑者を逮捕していますが警察組織内では公務執行妨害は全然格好良くないですし,ほとんど褒められることはありません

少なくても私がいた警察では全く褒められることはなく,刑事さんの仕事を増やしてブツブツ文句を言われます。
私が見た公務執行妨害罪のほとんども『失敗妨害』です。

もちろんそうでなく,立派な公務執行妨害での逮捕もあります。

1つ断りとして,失敗妨害だからと言って冤罪とかそういうものではありません。一番悪いのは犯人です。

公務失敗(執行)妨害とは?

警察官は,常日頃から受傷事故防止(警察官自身が車に轢かれたり,相手に攻撃され怪我をさせられたりすること)について耳にタコができるくらい言われています。

警察官が暴行や証拠品などの損壊に合わないようにしなければなりません。暴行や証拠隠滅する輩にマトモな人間はいません。
喧嘩の現場に向かう時,粗暴な被疑者宅を捜索する時,酔っ払いを相手にする時,シャブ中を相手にする時など常にイメージして現場に行かなければなりません。

警察官は常に最悪の事態を想定して行動しなければなりません。

全て気をつけていても公務執行妨害に遭うときはあります。防げないこともありますし,そういう時は仕方ありません。

一番多いのが警察官自身の油断です。

油断して,『目を離した隙に証拠品を壊される』『事情聴取している時に,周りが見えておらず仲間に奪還されそうになる』『犯罪者に対し警戒心を緩め,殴られる』など様々あります。

ほとんどが警察官自身の油断から生まれており,防げる公務執行妨害なのです。

・酔っ払い

・喧嘩の仲裁

・若者のたむろ(少年い集)

こんな時に,失敗妨害が多く発生してしまいます。

まだ油断という心の隙から生まれる公務執行妨害は100歩譲って許せるとします。

中には,警察官が余計な一言を言ったりし,相手を興奮させ,結果的に公務執行妨害にまで発展してしまうというケースもあります。

私がまだパトカーに乗っていた時の話です。まだ巡査でしたのでパトカーに一緒に乗っている相勤者は巡査部長で上司です。
この巡査部長は定年まで10年を切っているベテランでしたが,事情聴取などをしているとよく余計な一言を言って相手と口論になったりし,相手を興奮させてしまいます。
その結果,相手から胸ぐらを掴まれたり,押されたりし,巡査部長は『公務執行妨害やぞ』と逮捕はしないものの,よく伝家の宝刀かのように口にしていました。
見ているこっちからしたらどっちもどっちでそんなことで逮捕してたら相勤者の私としてはたまったもんじゃありません。

このような感じで逮捕に至るケースも多々あります。こんなケースは暴力を振るう奴は悪いですがそれ以前にその暴力・脅迫は警察官自身が原因で生み出されていますのでこれぞまさしく公務失敗妨害です。こんな場合は失態妨害と言った方が良いかもしれませんが。

警察官は基本的に公務執行妨害で逮捕はしたくない

警察官は,基本的に公務執行妨害での逮捕は避けたいと考えています。少なくても私、私の周りの警察官はそうでありました。何故なら

1 評価されない

2 かなり面倒臭い

3 担当刑事に嫌味をかなり言われる(仕事を増やすから)

などです。

私は,約10年警察組織にいましたが公務執行妨害で逮捕したことは1度だけあります。それは,パトカーに乗っていた頃,偽造ナンバーのマークⅡを追跡していた際に,袋小路に追い込んだところ,逃走を図る為に何度もパトカーに体当たりをしてきたので,その時は,迷うことなくマークⅡのガラスを叩き割り,公務執行妨害で逮捕しました。

警察官自身が被害者になれば,もちろん被害者調書を取られ,生い立ちから経歴なども全て調書にしなければなりません。検察庁で検事の聴取も受けます。その間,現場は手薄になりますし,現場の警察官が1人欠ければ,大袈裟に聞こえるかもしれませんが街に隙がかなり出来,犯罪者にとって犯罪がしやすくなってしまいます

犯罪者は容赦なく逮捕するのが当たり前かもしれませんがそのようなことが色々頭に浮かび,公務執行妨害での逮捕は極力避けたいのです。

ただし,パトカーから逃走している最中にワザとパトカーに衝突したり,犯罪者を逮捕している際に,その仲間から妨害を受けるなどは,容赦なく公務執行妨害で逮捕します

今考えたら,失敗妨害を除き,もっと逮捕しておけばよかったかなと思います。悪い奴は,どんどん逮捕し,平和な世の中にしていけなければならないのに。

まとめ

警察官や消防士,自衛官は極力自分自身が要救護者になってはいけません。それと同じで警察官も犯罪の被害者になることは極力避けるよう努めなければなりません。

でも警察官などの公安職は,非常に危険な目に遭遇する可能性が多い職種です。以前の記事にもあるように,何の準備が出来ていない状態で急に指令が入り,直ちに現場に急行しなければいけません。

【刑事と制服警察官】はどちらが危険?

2018.09.17

それでも如何にして危険を回避して危険な状況を安全に処理するのがプロの警察官です。

警察官が被害者になることで,その分,自分自身や多数の警察官の労力や時間がそれに費やされてしまいます。

ということは,先ほども書いたように現場が手薄になり,最終的には一般の方の身体や財産に影響することになります。

中には勘違いしている警察官もいます。なんかあったら公務執行妨害で逮捕したらいいなどと考えた警察官です。『コウボウ』と格好良く聞こえるかもしれませんが警察官にとっては非常に恥じるべき犯罪なのです。→失敗妨害の話です。

逆にちゃんとした公務執行妨害は,どんどん逮捕するべきです。ちゃんとした公務執行妨害の犯人は薬物中毒者,半グレ集団,暴力団(末端のチンピラ)などの極悪人が多いですから。

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