【警察官は危険】警察官殺傷事件から考える警察官の安全,警察時代の危険な体験。

松本誠です。今回は,警察官に対する殺傷事件がよくニュースになっていますので,そのことについて書いていきたいと思います。

ここ最近,警察官が刃物などで襲われる事件をよく見ます。宮城県,富山県2件,東京都で発生し,宮城県と富山県に警察官については,残念ながら亡くなっています。
ニュースになっている事件はほんの一部で,ほとんどがニュースにもならず,その場で検挙され,世間に広まらず終了しています。

私自身も地域課に所属している時,命の危険を感じたこと,拳銃目的で2人組囲まれたことなど,濃い経験を何度もしました。

警察組織の中で特に危険なのは以前にも記事にしましたが交番やパトカー乗務の警察官です。

【刑事と制服警察官】はどちらが危険?

2018.09.17

今回は,『警察官の殺傷事件について』と『私自身の危険な体験』を綴りたいと思います。

【警察官殺傷事件から見る】警察官は常に危険と隣り合わせ。

ここ最近,宮城県,富山県などで警察官が襲われ殉職してしまう事件が連続で発生しています。自分勝手な愚かな者に,社会の為に汗水流して働いている者が殺されてしますのです。
罪のない人が殺される事件のニュースを見る度に悲しくなりますが,元警察官の私は,警察官が殺されたというニュースを見ると他の事件とは違った悲しい感情が出てしまいます。

警察官が襲われる事件というのはほとんどがニュースにならず,今回は亡くなったり,あってはならいことですが拳銃を奪われたりしているのでニュースになったのでしょう。

昨年からの事件を含め,警察官を殺している被疑者は全て拳銃奪取を目的としています。動機は

  1. 自殺する為
  2. 強盗する為
  3. 殺人をする為

と様々ですが,どれにしても自己中心で許すことのできないものです。

お金を強盗する犯人は,お金が目的ですが,拳銃を目的としている犯人は,命も目的です。
警察官は,そのような犯人からしたらダイヤモンドのような物(拳銃)を腰にぶら下げています。1億円を腰にぶら下げて歩いてるようなものです。

しかし,腰にぶら下げている1億円は厄介で,狙われてしまうと警察官自身,奪取された場合は,国民の命にも関わってくる重大なことです。

警察官は,常に危険と隣り合わせです。通報で現場へ駆けつける際,交番で被害届や拾得届を受理する際,道を尋ねられ際など常に警戒しておかなければなりません。
富山の事件もそうですが,警察官が一瞬気を許した時に危険が襲ってきます。富山の事件は,『落し物を拾った』と拾得者を装って交番を訪ねて来ています。

警察官は気を許してる時間は1秒足りともありません。

でも警察官も人間です。交番やパトカーの警察官は24時間勤務です。人間は24時間も緊張感を保つことはほぼ不可能です。
富山の事件も拾得物と聞き,一瞬気を許してしまったのでしょう。

気を許すのはいけませんが私も経験があるだけに24時間保つことは難しい問題です。

警察官は危険。自分の為,国民の為に受傷事故防止の徹底に努めなければならない

繰り返し言いますが特に地域警察官は,常に危険です。朝礼やミーティング,無線なのでもしょっ中,『受傷事故防止を徹底せよ』という指示が流れます。

受傷事故防止とは?
事故や怪我の防止

各都道県によってマニュアルは違いますが 私がいた警察では24時間,防刃チョッキ(対刃防護衣)着用しなければいけませんでした。交番にいる時もです。
抜き打ちで監察が回ってるきて,着用していなければ検挙され,警察署幹部に報告されます。

その他にも,交番に来訪者があれば必ず立って初期対応をしなければならなかったり,交番などの壁に掛けてある地図で道を説明するときも絶対に背を向けないなど受傷事故防止についての決まり事項は,たくさんあります。

受傷事故防止のマニュアル
  1. 交番などに来訪者があれば最初は必ず立って対応する。
  2. 地理教示などの対応でも絶対に背を向けない。
  3. 防刃チョッキの24時間着用義務。(休憩中は除く)
  4. 立って対応する時も可能な限り,拳銃が吊ってある右腰を半斜め後ろにする。
  5. 相手が子供でもポケットに手を突っ込めば半歩下がって対応する

などが各都道県県警で内容は違うもののマニュアルとしてあります。

1年ぐらい前に奈良県へ観光に行った時の話ですが,子供が財布を何処かに置き忘れて無くしてしまったので奈良県の交番に行きました。
車の中で子供が1人寝ていたので妻と子供を車内に残し,交番を訪ねました。
20代のまだ若い警察官が対応してくれたのですが,何も考えていないのでしょうか,座ったまま,最初から最後まで椅子から一切動かず危機感ゼロの状態で対応していました。

私は,遺失届を出しに行っただけですが,これが少しでもチャンスをうかがっている犯罪者であれば今頃,あの若い警察官は,襲われていたかもしれません。

『警察官は被害者になるな』『消防士は要救護者になるな』これは人命に携わる職種の絶対に守らなければならないことです。その分,市民に係われる時間(捜査,相談など)が減ってしまい最終的には国民につけが回ってくるからです。
警察ではそのような教育を受けています。

交番や警察署は安全面を強化し,厳重警備を行うべきなのか?

警察署や交番は,治安を守る警察の施設であり,そんな所が襲われては,国民の体感治安が悪くなるだけです。

海外の警察官って接したことはありますか?一部の国を除き,警察官は非常に怖く,接しにくく,かなり威圧的な警察官が多いです。
日本の警察官も上から目線,偉そう,威圧的と言われますがまだまだ優しい方です。海外では,市民の意見など聞いてくれないですし,国家権力を振りかざして有無を言わさず,警察官の言うことを聞かされ,警察官というのは怖い存在と思われている国が多いです。

日本は,違います。ああ見えて日本の警察は,できるだけ市民と近くで触れ合うような組織でありたいのです。
日本警察の創始者川路利良は, 警察のコンセプトの1つとして『サービス』を掲げていました。

そのサービスと厳重な警備の両立は簡単そうに見えて難しいです。

地域警察官というのは言葉を言い換えれば『警察のショウウィンドウ』です。市民が一番気軽で一番近く,最初に接する警察官です。交番はその場所です。

そこに衝立を作ったり, 壁を作ってしまうと『警察官と接しにくい』『気軽に相談に行けない』などの身近な警察官が遠くになってしまいます。
交番というのはその制度が以前から世界でかなり評価されていて,その交番が日本の治安を支えていると言っても過言ではありません。海外の警察幹部が視察に来るぐらいです。

警察官の安全の確保は最重要課題ですが,警察に対する信頼が低下している中,サービスの低下も避けなければ行けません。非常に難しい問題です。

だからこそ,警察官の安全とサービスのバランスを均等に保つことは難しいのです。

個人的な意見として,理想としては警察官の安全と住民へのサービスの両方を向上させることですが,それはあくまで理想で,なかなか現状では難しいでしょう。警察官も人間で家に帰れば家族がおり,お父さんお母さんです。今は警察官の安全を優先として対策を考えて欲しいです。

警察時代に実際に経験した『命の危険』を感じた事案

私は,10数年,交番やパトカーの制服警察官,刑事を経験しましたが命の危険を感じたこと,拳銃を狙われたこと,など何度もありました。
命の危険を感じない程度の危険を書けば切りがありませんので3つだけ紹介させて頂きます。全て制服警察官の時です。

警察時代に命の危険を感じた事案1『深夜の日本刀男』

私がまだ警察学校を卒業して1年も経過していない時でした。私は交番勤務をしており,管轄面積が狭いオフィス街を担当していたので自転車での勤務でした。

私の警察では22時以降は原則として2人行動としていましたが事案が多く1人1人で行動することもよくありました。

私は事案処理を終え,もう1人の警察官の事案対応の応援に向かっていました。時間は恐らく深夜1時ころだったと思います。
その時,無線で『日本刀を持った男が奇声を出しながら日本刀を振り回している』との110番通報を傍受し,自転車で急いで2分くらいの場所でしたので1人で急行しました。

現場に到着すると,中年のスキンヘッドの男が私に気づき奇声を出しながら刀を振り回し,私の方へ向かってきました。
咄嗟のことで,訳も分からないまま取り敢えず無線機の緊急発進ボタン(手放しで一方的に状況を伝えれる機能)を押し,自転車から降りました。

『刀を捨てろ』『刀を捨てろ』など大声で怒鳴っても捨てるはずもありません。見るからに覚せい剤が効いている真っ最中みたいな顔をしています。10年以上前ですが今でもそいつのその時の顔を鮮明に覚えています。

私も最初はアドレナリンが出て興奮していましたが,少し冷静になり,拳銃をホルスターから取り出し,銃口は向けていませんが『撃つぞ,捨てろ』などと相手に警告しました。拳銃を見た被疑者は,日本刀を地面に捨てたのでそのまま制圧しました。

その後に応援のパトカーなどが現場へ駆けつけてくれたのでそこでようやく一安心です。

相手を払腰で投げ飛ばし,そのまま袈裟固めで完璧なまで抑えましたが覚せい剤は,北斗神拳並みに人間の力をフルに引き出すので結構暴れられました。私が現場に到着してから2分くらいの話ですが当事者の私は,1時間くらいに感じました。

警察時代に命の危険を感じた事案2『車上狙いランエボ集団』

一時期,毎日,盗難のランエボやインプレッサの国産スポーツカーでの車上狙いが毎日何件も発生した時期あります。

日によって車の色などは変わります(パクリ物)が同じ集団,が好き放題していました。被疑者は複数名ですが全員,覚せい剤中毒者です。人間じゃありません。

コンビニでの駐車車両,車の中で仮眠とってる人の車など人が居ようが関係ありません。カバンやお金を見ると奪いに来ます。見つかると熊用催涙スプレーやハンマーで危害を加えてきます。

パトカーで発見しても3車線あるような大きな道路の交差点が赤信号であってもノーブレーキで逃走します。ランエボやインプレッサめちゃくちゃ早いです。
阪神高速を逆走して逃走したこともありました。

なかなか現行犯逮捕が難しい状況でありましたが,ある夏の早朝,午前5時頃だったと思います。パトカーで警らしていたら広い月極駐車場で物色している白色のランエボを発見しました。
気付かれないように私はパトカーを降車し,もう1人はパトカーで月極駐車場の出入口を塞ぎました。

私は,1人の被疑者が降りたのを確認しましたので近づいて行ったのですが車に乗って待機している共犯者に見つかってしまい,『早よ,乗れ。警察来てるぞ』と叫び,もう1人の方にも車に乗り込まれてしまいました。

するとそのランエボは私の方に向かってフル加速です。完全に殺しにきています。私は咄嗟にかわしましたが何度も私の方に向かってきます。
拳銃抜いている時間なんかないです。避けることで必死です。

パトカーに乗っていた相勤者がそれに気づきパトカーのサイレンを鳴らしてランエボを威嚇したところでようやく私を轢きに来るのをやめました。
パトカーで出入口を塞がれている為,駐車場内をグルグルもうスピードで走り回りました。警棒のガラスクラッシャーで助手席側のガラスを叩き割りましたが止まるはずもなく,最終的にはチェーンで塞がれていたもう一つの出入口を突き破り逃走されてしまいました。

多分,数十秒の出来事ですが,日本刀の時より,命の危険を感じました。その時は怖いとか感じませんが,後で家族の顔とかを思い浮かべると非常に怖かった記憶があります。マジで死ぬかと思いました。

不覚にも逃げられてしまいましたがその日の夕方に別件でその被疑者は,刑事に逮捕されました。

警察時代に命の危険を感じた事案3『腰に付けている拳銃を狙われる』

これはまだ警察学校を卒業して,1年位の時だったと思います。私は交番勤務で午前5時過ぎ,1人で自転車でパトロールしていました。まだ午前5時なので人は少なく仕事帰りのホステスや酔っ払いが少し歩いているくらいです。

夏でしたので少し明るくなってきた頃で,私は眠気と戦い,早朝の爽やかな空気を自転車に乗りながら感じていました。

その時,2人組の若い男に『お巡りさん。ちょっと教えてや』と声をかけられ,自転車を止めました。
私は2人組を見た瞬間,まだまだ私は新米でしたが直感で『あれ。何かおかしいぞ』と思い,すぐに対応できるよう自転車から即座に降りました。

若い男2人が『道教えてや』と私を2人で囲むように尋ねきました。顔を見ると完全,覚せい剤が効いています。特有の汗もかいています。
私は,『転勤してきたばっかりやから,ちょっと本署に聞くわ。ちょっと待ってや』と言い,無線で応援要請をしました。

私はその時は冷静で,『2対1』で襲ってきたらどうやって対処しようとイメージしていました。私は小学校から空手,高校から柔道をしていましたのでそこそこ自信はありましたが相手が二人だと状況が違います。

応援が来るまで時間を稼ごうと思い『今,他の警察官向かってるからちょっと待ってな。』などと時間を繋いでいましたが,若い男の1人が『拳銃本物なん。ちょっと見せてや』と腰に付けてる拳銃に手を伸ばしてきました。

まだ私は拳銃目的とは感じていません。シャブ中がラリって自分から警察官に喋りに来ているという感覚です。

まだ警察官側から仕掛ける訳にはいきません。今捕まえてしますと後に覚せい剤が判明しても裁判で無罪になってしまいます。

私は『本物やけど触ったらあかんで』と言いましたが相手も応援が来る前に,拳銃を手に入れなければなりません。
相手は段々と口調が荒くなり,1人の方が『もうええわ,お前殺したる。』と私の胸倉を掴み,被疑者のもう1つの手が拳銃に手を掛けてきました。

私は咄嗟に,胸倉を掴んで来た被疑者を投げ,押さえつけましたが問題はもう1人の方です。もう1人も私が押さえつけていて手を出せないのをいいことに拳銃ホルスターのボタンを外し,拳銃を取り出そうとしてきます。ボタンを開けても,もう一つ中にボタンが付いてるのでそれは意地でも外されはいけません。

私は,無線機の緊急発進ボタン(手放しで一方的に状況を伝えれる機能)で再度応援を急ぐよう要請しましたがまだ応援は来ません。めちゃくちゃ長く感じます。

私は体制を無理やり拳銃を地面の方に持っていき,全体重を拳銃に乗せ,拳銃奪取を阻止しました。私はもう一人に何発も殴られ,押さえつけてる方も暴れまくりで必死で拳銃を守りました。

そうこうしている内に,応援パトカーのサイレンが聞こえ,1人の方は逃走しました。1対1でもう押さえ込んでいるので大丈夫です。応援が到着し,被疑者1人を公務執行妨害で逮捕し,被疑者が近くに止めていた車をガサした結果,覚せい剤と大麻が発見されましたのでもちろん覚せい剤取締法違反でも逮捕されました。

逃走した被疑者は窃盗の指名手配犯と判明し,数日後にこちらも逮捕されました。

取り調べで『拳銃あったらムカつく奴,簡単に殺せるから』と供述しており,拳銃目的で私を襲ったことが判明し,一歩間違えたら恐ろしい結末になっていたなと今でもゾッとします。

 

他にもいろいろ危険なことは経験しましたが命の危険を感じた3つはこれらです。一つもニュースにもなっていません。警察官が襲われたというニュースはほんと一部しかありません。

警察の偉い方,直ちに警察官の安全を確保して下さい。

今回は『警察官殺傷事件から見る,警察官は危険』と『警察官時代の命の危険』の話を書きました。

警察官も家に帰れば,夫・妻でありお父さんお母さんです。朝,笑顔で『行ってきます』と家族に挨拶し,そのまま帰らぬ人になってしまうリスクが高い職業です。

私も先に書いたように一歩間違えれば死んでしまっていたかもしれない事案にも遭遇しています。

警察官や消防士は,命を張って国民を守らなければならない職業ですが自分の命も大切です。どんな殺人事件も卑劣で怖いですが『警察官が刺され死亡』というニュースを見たらどうですか??
警察官を辞めてただの会社員になった今,警察官に対して特別な感情があるものの,非常に治安が悪くなって物騒な世の中だなと感じます。警察官が死ぬと体感的に治安がより一層悪くなったと感じてしまいます。

これからも警察官の殉職事件がなくなることはないです。でも減らすことは可能です。全国の都道府県警の警察官に24時間,防刃チョッキの着用義務をすることなどです。
私のいた警察は治安が他府県に比べて悪いということもあると思いますが10年以上前から24時間着用しなければなりませんでした。
でも今だに夜だけや危険な現場へ行く時だけなどの着用義務の警察もあります。地方へ行くほどそうです。

殉職事件のあった富山や新潟などは東京や大阪,愛知などと比べて治安がよく平和な地域です。でも罪のない警察官が殺されるという残念な事件が起きています。

防刃チョッキは肩は凝るし,夏は暑いし非常に鬱陶しいものです。規程がなければ何もない普段から着用する警察官なんかほとんどいません。私も規程がなかったら普段は着けていなかったと思います

交番の要塞化は,サービスから遠退いてしまいますし,お金もかかるので難しい問題です。でも防刃チョッキの着用義務は,命令するだけなので簡単にできます。その命令は警察官の安全の為になります

防刃チョッキも守れる範囲は限られていますが,着けないより100倍は安全です。警察庁や各都道府県警は,先ずは簡単にできる防刃チョッキの着用から規程を徹底し,できることから警察官の安全のことを考えて欲しいです。

霞が関のお偉いさんは,机上のことしか分からないので現場の危険性なんかはあまり深く考えていないかもしれませんが

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