【遺失物等横領(占有離脱物横領)】と窃盗の違い,具体例を交え説明します。

こんばんは。拾った財布の現金を抜いて使ったり,捨ててあった自転車を乗って帰ったことありませんか??私はもちろんありません。ネコババは許さない松本誠です。

今日Yahoo!ニュースを見ていたら消防士さんが占有離脱物横領で事情聴取という記事がありました。

8月から東京で研修中(幹部研修だと思われます)の消防士さんが東京都内の公園にあった自転車を無断で使用し,職務質問され捕まったという事件です。しかも酒に酔った状態で友人に会う為に待ち合わせ場所に向かう途中だったらしいです。

ん?酒を飲んでた?飲酒運転やないですか!!酒を飲んで自転車に乗ったらいけません!!

今回の事件も知らない人が見たら窃盗じゃないの?と思われますが今回は占有離脱物横領(遺失物横領)という罪になります。

そこで今回は占有離脱物横領(遺失物横領)はどんな罪なのか?また窃盗との違いを簡単に説明していきます。

遺失物等横領(占有離脱物横領)とはネコババのこと

遺失物等横領(占有離脱物横領)とは分かりやすく言えばネコババのことで,横領罪の一種です。略称,占離(センリ)。警察官はそう呼んでいます。

刑法234条遺失物横領罪
遺失物,漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は,1年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する

と刑法に明記されています。

遺失は分かるとしても占有って何よ?って方もいらっしゃるともいますので説明しますと刑法上では,財物が人の事実上または法律上の支配下におかれている状態をいう。とあります。

言葉が難しすぎて訳分かりませんので簡単にしますと占有とは自分が物を所有しているということです。ここでいう所有は持っていなくても家に置いていても所有です。持ち歩いていることは携帯です(もちろん携帯は所有に含まれます)。

補足
人から借りている物,例えばツタヤでレンタルしたDVDも自分の家にある場合は自分が占有していることになります。

『遺失物』と『横領』という言葉をくっ付けている罪名なので順番に説明していきます。

遺失物とは?

遺失物は,簡単に言えば落し物のことです。物を失くして警察に行けば遺失届という書類を記載します。その遺失です。

遺失物は自分の意思に反して占有(自分の元)を離れ,誰の手にも渡ってない物のことです。

占有とは,上にも書きましたが自分の支配下に置かれている物のことです。自分が管理している物のことです。何度も言いますがツタヤで借りたDVDは自分が占有する物になります。

横領とは?

横領とは他人から委託され預かっている物を自分の為に使ってしまうこと拾った物などの自分に権利がないのに自分の物のように使ってしまうことです。よく,会社のお金を着服とか学校の先生が積み立てた修学旅行費をパチンコに使い込むといったニュースを目にしますがそれが横領です。

単純横領,業務上横領そして今回の記事の遺失物等横領(占有離脱物横領)があります。

ちょっと話は逸れますがせっかくなので単純横領と業務上横領の説明を簡単にしておきます。

 

単純横領罪

刑法第252条
第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は,5年以下の懲役に処する。

第2項 自己の物であっても,公務所から保管を命じられた場合において,これを横領した者も前項と同様とする。

単純横領罪の例として,レンタルDVDを返却期限を越えてもずっと自分の物のように使用している場合は単純横領になります。

業務上横領罪

刑法第253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は,10年以下の懲役に処する

業務上横領の例として,他人の物を業務上管理する物が,その物を横領した場合が業務上横領罪にあたります。上にも書いた修学旅行の積立金は業務上横領です。

 

てな感じで先に記載した遺失物を横領することで遺失物横領になります。

遺失物等横領罪には漂流物とその他占有を離れた他人の物って条文に記載されてますけどそれ何ですか?と思われた方,それは遺失物横領罪のにあてはまる部分です。

『漂流物』と『その他占有を離れた他人の物』を説明します。

漂流物とは?

海や湖,川などの水面や水中にある遺失物のことです。

例えば,琵琶湖の水面に浮かんでいる釣り人がロストしたルアーなどが漂流物にあたります。

その他占有を離れた他人の物

単なる遺失物(落し物)や漂流物とは異なる方法で自分の占有を離れた物です。

例えば,台風で飛んできたバケツや窃盗犯が盗んだ自転車を乗り逃げし,放置されている自転車,郵便局の誤配などがこれにあたります。

 

遺失物等横領とは,説明した『遺失物』『漂流物』『その他占有を離れた他人の物』と『横領』を組み合わせた罪になります。

 

遺失物等横領と窃盗の違いは?

遺失物等横領と窃盗はよく間違われます。

その違いの全ては持ち主(所有者)が占有しているかどうかということです。占有していれば窃盗にあたりますし,占有していなければ遺失物等横領にあたります。

 

例えば,誰でも出入りできる電車内の網棚の上に持ち主不明の忘れ物(持ち主の占有を離れていいる)のカバンがあり,第三者が持って帰る行為は遺失物等横領になります。

一方で一旦忘れ物としてそのカバンを電鉄会社が預かっていて占有が電鉄会社にある場合,その場所から持ち去った場合は,窃盗にあたります。

 

このように同じような事案でも物の占有が誰の手にも移っていない場合と誰かに移っている場合で全く別の罪名になります。

何度も言いますが誰にも占有されていないのが遺失物等横領で誰かが占有しているまたは一旦は離れたが他人に占有が移っている場合は窃盗です。

何度も何度も言いますが占有という言葉が重要になります。

遺失物等横領罪の具体的と窃盗罪の具体例

遺失物等横領と窃盗の違いはややこしいですがここでよく似ている具体例を書いていきたいと思います。

まずは窃盗罪です。以下の例は,まだ占有が離れていない状態です。

遺失物等横領(占有離脱物横領)に間違えやすい窃盗罪

旅館内のトイレに誰かが置き忘れている財布(大審院大正8年)

忘れ物ですので遺失物等横領になりそうですがこの場合,財布は旅館に占有権があるので窃盗になります。

裁判所は事実上の支配は,旅館にあると判断していますのでこの場合,被害者は旅館になります。

ゴルフ場のロストボール,パチンコ屋で落ちている玉を持ち帰った

これは,ゴルフ場に占有権がありますので言うまでもなくゴルフ場が被害者の窃盗になります。

パチンコ屋の玉についても同じで,転がっている玉やメダルはパチンコ屋の物ですのでもちろん占有権はパチンコ屋にあります。

人を殺害し,その後に窃盗の意思が生じ,被害者から財布を奪い取った

一見,強盗に見えますが殺害後に生まれた心情ですので残念ながら日本の法律ではこの場合,強盗殺人になりません。通常,死人には占有権はありませんが,裁判所は,殺害直後であればまだ占有権は被害者にあると判断していますのでこの場合は窃盗になります。(もちろん殺人も)

 

次に遺失物等横領(占有離脱物横領)の例です。

占有離脱物横領の具体例

自転車窃盗の犯人がその自転車を放置し,その自転車を別の者が持ち去る行為

窃盗の被疑者は,最初に盗んだ者です。その時点で本来の持ち主の占有は完全に離れていますのでその犯人が放置し,別の者が盗めば占有離脱物横領の罪になります。

持ち主が降車した後の電車の網棚からカバンを盗む

持ち主がまだいる場合はもちろん窃盗です。また終点に到着し駅員さんが忘れ物であるカバンを確保した後でも窃盗になります。まだ占有が持ち主にあるか,または占有が電鉄会社に移っていますので。

占有離脱物横領はこの間にカバンを持ち去れば占有離脱物横領になります。持ち主がいなくなり,まだ誰でも行き来できる電車内でそのカバンを持ち去った場合です。

廃品回収業者が回収した古紙の中にあった現金を盗んだ場合

現金なんて捨てませんよね?本来の持ち主が何らかの理由で誤って古紙に混ぜてしまった可能性が大です。ほとんどの被害者は気付いていないと思われますのでその場合は占有は完全になくっています。よって,この場合は占有離脱物横領にあたります。

飼い犬

飼い主の元から何らかの理由で逃げ出してしまい,また迷っている犬には本来の飼い主(持ち主)がいます。首輪がついていたり,明らかに何処かで飼われているであろう犬を見つけたら,いくら犬が好きでも勝手に持ち帰って飼ってはいけません。必ず拾得物として警察に届け出て下さい。明らかに野良犬の場合は,保健所に届け出しましょう。

公園で死んでいる人のポケットから財布を抜き取った

こんなことまず遭遇することはないですが,死人には占有権はありませんので遺失物等横領にあたります。

先にも記載しましたが殺してから盗んだら窃盗になります。

海や湖などに根掛かりしているルアーを回収し自分の物にした

釣り人によくありがちですが占有を離れているとはいえ,自分の物ではありません。この場合は,漂流物にあたりますので持ち帰れば遺失物等横領になります。レアなルアーなどでどうしても欲しかったら漂流物として警察署に届け出ましょう。持ち主が見つからなければ正々堂々と自分の物になりますから。まぁまず持ち主は現れません。

 

以上が間違えやすい窃盗と遺失物等横領の具体例です。いずれにしてもポイントは占有ですね。

まとめ

どうでしょうか?遺失物等横領(占有離脱物横領)のことは少しでも理解していただけたでしょうか?

遺失物等横領は,比較的,身近な犯罪です。以前,記載した微罪処分にも遺失物等横領(占有離脱物横領)は該当します。

【微罪処分】ってどんな処分?どんな犯罪が対象で,その要件は?

2018.09.20

窃盗と遺失物等横領ってややこしいと思いますが犯罪を犯す者はどちらも何の犯罪に該当するかは分からないにしてもやましいことぐらいは分かるはずです。

具体例でも記載した飼い犬の件は,可哀想などといった理由で罪を犯してしまう可能性がないことはないですね。きっちり警察に届けて飼い主が現れない場合は自分で飼えますのでしっかりとした手続きを行って下さいね。

てなことで今回は遺失物等横領(占有離脱物横領)コトネコババについて記載しました。

それでは,また。

 

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