元刑事の松本誠です。カタカナやめて今回から漢字で名乗ります。
さて今回は,テレビやインターネット,そして世間の皆さんが勘違いしていている疑問,刑事と制服のお巡りさんはどちらが危険かを両方経験した私が教えます。
ドラマや小説では刑事さんが大活躍ですし,刑事は超多忙で超危険と思っている方がたくさんいらっしゃると思います。
一言で言います。それは勘違いです。
超多忙については各都道府県警や配属先にもよるでしょうが私の場合は正解でした。
本当に危険なのは制服警察官(地域警察官)です。
刑事と制服警察官の違い

刑事の方が偉いの??
ってよく聞かれますがそれは違います。刑事も制服お巡りさんも同じ警察官で,同じ立場です。部署が違うのとやってることが違うだけです。白バイ隊員や機動隊員も同じ警察官です。
私がいた警察は,刑事になる為には希望して推薦されて試験を受けた後,刑事専科という教養を受け,人事異動で刑事課に配属されるという流れです。
交通課や生活安全課,警備課なども同じ流れです。
制服の警察官はそのような専科教養を受けなくていいので警察学校を出れば誰でもなれます。
だからと言って,刑事が偉いわけではないです。何度も言いますが同じ警察官ですので。階級も巡査,巡査部長,警部補という順番に上がっていきます。
ただ刑事は偉そうな態度な人間が多いです。制服なのか私服なのかの違いだけなのに。
刑事の仕事と制服警察官(地域警察官)の仕事
刑事と地域警察官はやってることや犯罪者に対しての準備が違います。まずは刑事の仕事を簡単に紹介します。
刑事の仕事
ここでは主に警察署の刑事(所轄の刑事)の仕事について説明します。
刑事は主にデスクワークで,書類に追われまくってます。ドラマみたいに常に張り込みや犯人を追いかけていません。デスクワークの途中に地域警察官が110番通報で現場臨場している空き巣現場やひったくり現場などの現場に行って実況見分(現場検証)をしたり,被害者からの供述調書を取ったりします。
そしてまたその事件の書類がたまり,今度は地域警察官が職務質問で泥棒を検挙してきて取り調べをし,その被疑者を48時間以内に検察庁に送致しないといけません。
それの繰り返しです。その合間(合間なんかないですが時間を作って)に空き巣やひったくりなどの聞き込みや防犯カメラの精査,携帯電話会社などへの調査依頼の文書作成などの捜査を行い犯人を固めていきます。
家に帰れません。
ある程度,捜査が進みそこそこ大きな事件や暴力団が絡む事件になってくると本部から応援にきてくれます。と言っても踊る大捜査線みたいに20人も30人も来てくれません。(大きな殺人事件などは別ですが)せいぜい4,5人です。
本部が来てくれたら捜査本部ができますので本格的に進み,ほとんどが逮捕に繋がります。その際は,その捜査本部にそこまでその捜査に従事していた刑事も入って捜査に加わります。
でも,残された刑事がその1人の刑事の仕事も乗っかってくるので残された方もたまりませんが。
ようやく犯人を検挙し,次は長い長い取り調べに入ります。
上記に書いたように捜査本部が来てくれたらいいですが来なかったらこの間もデスクワーク地獄も掛け持ちです。結構無理ゲーです。
大体はこんな感じです。
でも犯人を捕まえた時に被害者の方のホッとした顔を見るとその忙しさは吹っ飛びますけどね。
制服警察官の仕事
ここで言う制服警察官の仕事は,警察署に所属する交番やパトカーに乗っている地域警察官です。
地域警察官は,主に110番通報や警察署などへの直接申告に対応したり,職務質問からの検挙活動,交通取締りなどする何でも屋です。
常に第一線で喧嘩や酔っ払いなどを取り扱わないといけません。
警察のショーウインドウです。
やることは多彩ですが例えば職務質問で覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕したとしたら署に搬送(刑事に引致)し,現行犯逮捕手続書などの数種類の書類を作成し警察署あとは刑事に引き継げば終了です。早ければ時間にして2時間から3時間で終わります。
警察学校を卒業したら一部を除いては皆んな地域警察官に配属です。ここで修行して希望があってうまいこと推薦してもらえたら刑事や交通などの専務員になれます。
刑事と制服警察官どっちが危険?

刑事と制服警察官のどちらが危険か?
圧倒的に制服警察官です。
制服警察官が扱う事案は様々で,喧嘩や酔っ払いの大暴れ,薬物中毒者などこれらの事案を110番指令などで早く到着してその場を収めなければなりません。
また,職務質問しようとした車に体当たりされそうになったり,引きずられそうになったりといろいろ危険です。
私自身も何度も命の危険を感じたことがあります。
110番通報で日本刀を持った男がいるとの指令を受け,現場臨場。それぞれ事案を扱い中でしたので1人です。現場に到着したら真剣(後から鑑定して判明)を持ってる男がいて,私に気づき振り回しながら向かって来ました。
初めて拳銃をホルダーから抜きました。抜いた時点で刀を捨てたのでそのまま制圧しましたが一歩間違えてたら今ごろブログなんか書いてません。
他にも偽造ナンバーを付けたクラウンを職務質問した時も車に引きずられたり,車上荒らしのランエボに引かれそうになったりなどキリがないくらい危険がたくさんありました。全て覚せい剤中毒者です。
一方,刑事のときは一度も危険な経験はありません。
ガサ入れなので危険な現場にはいっぱい行きます。
でもそんな現場には1人で行くことはまずないのです。それまでも念入りに捜査して,容疑の人物の体格やどんな性格しているかなど入念に調べて,尚且つ身柄を確保する前にはしっかり準備して,複数人で行きます。
それで暴れられてもほとんどが想定の範囲内ですので大丈夫です。稀に想定外のことが起きて怪我をするときがありますが。
暴力団事務所にガサ入れ行っても若い衆がギャーギャー大声で吠えるだけで別に危険じゃありません。
例外として本部刑事部には機動捜査隊という私の嫌いな部署(嫌いな理由はまた機会があれば)があります。ここは,事件の初動捜査をする部署でまだ興奮している犯人を職務質問したりしますので危険といえば危険です。
このように制服警察官と刑事では準備が全く違います。それは仕事内容が違いますので当然ですが読んで頂いて分かったように地域警察官には準備している時間がないのです。準備は心構えだけです。
よくニュースで警察官が不審車両に轢かれたとか,ナイフで刺されたとか報道されてますがそのほとんどが制服警察官です。パトカーがぶつけれてボコボコになってるのももちろん制服警察官です。
これらのことから危険なのは圧倒的に制服のお巡りさんなのです。
刑事は犯人じゃなく上司や先輩が危険
先輩や上司には危険な人物が多いです。犯罪者なんか比にならないくらい危険です。刑事を目指す人はそちらの心構えの方が重要です。
警察組織にいたときはパワハラという概念(そもそも警察学校で洗脳されている)が私自身なかったのであまり考えていなかったですが,今考えたらパワハラのオンパレードでしたね。私は被害が少ない方ですが年の近い先輩や後輩はかなり危険な目に遭っていましたね。
- 大声で怒鳴りつけられる
- 取調室で壁に叩きつけられたり,殴られる。
- せっかく作成した書類をビリビリに破られて投げつけられる。
- 40度の熱で遅れてきた後輩を柔道場でボコボコにし,複雑骨折させる。
- パシリは当たり前。
ってな感じでまだまだいっぱいありますが刑事は犯罪者より上司や先輩の方が危険すぎます。
パワハラでなく指導の一環らしいです。
今は同期に聞いたらだいぶ減ってるみたいなので若手刑事も少し仕事がやりやすくなってるかもしれませんね。
まとめ
今回は刑事と制服警察官のどちらが危険かという話をしましたがどちらも危険なことには変わりありません。
ただ,制服警察官の方が危険な状況に陥りやすく怪我や場合によっては殉職という最悪の状況に至る危険性が高いというだけです。
結果,刑事より制服警察官の方が危険ということになります。
本当の刑事はドラマの刑事みたいに華々しい活躍はあまりなく,とても地道な仕事で,家族より仕事を優先しないとできない仕事です。でも地道な捜査で犯人を逮捕した時の喜びややり甲斐は他では味合うことはできないでしょう。それがどんな小さな事件でもです。
「刑事と制服警察官はどちらが危険?」を読んで、つくづく警察官にならなくてよかった、と今更ながらに胸をなでおろしています(笑)!
上司や先輩のパワハラって、軽~く犯罪レベルを通り越していますね! ああいうのって、暴行罪で訴えられないんですか? その後は職場にいられなくなるんでしょうから、退職寸前に告訴するとか・・・(*_*;
磯部さん。コメントありがとうございます。
警察や消防などは体育会系出身の諸先輩方が多くいますので,その部活のノリのままパワハラが横行しています。私はまだ被害は少ない方でしたが現役警察官で数千人規模の被害者の会が作れると思います。でも,人間味があって良い先輩や上司もたくさんいますよ。
不思議なことに訴える人はほとんどいないし,パワハラに限らずサービス残業や上司の無理難題などで労基に相談する者もいませんでしたね。私もそんな気はおこったこともないです。ひょっとしたら警察学校でその辺も知らない内に洗脳されているのかもしれません。