毎日毎日残業代もほとんど貰えないのに遅くまで残業しています。いい加減こんな生活疲れました。
でも家族を養うため会社の奴隷になってる松本誠でございます。
今日は,以前に記載した『それ犯罪ですよ,カゴ編』で少し触れた微罪処分について,書いていきたいと思います。
微罪処分(びざいしょぶん)とは,犯した犯罪が軽かった場合に一定の条件をクリアしていれば,検察に送致せず警察だけで処理をする刑事訴訟法246条ただし書きを根拠とした処分です。
日本では警察が認知した事件は全て検察に送致することになっていますがその例外が微罪処分になります。
それでは,微罪処分について,どんな犯罪が微罪処分に該当するのかまたその条件などを説明していきたいと思います。
微罪処分制度の目的

警察が認知した事件は全て検察に送致することになっているのに何で警察だけで処理できる事件があるのか?それには大きく分けて2つの目的があります。
事件処理の効率化
軽微な事件で処罰を必要としない事件について,事件の処理を簡素化し,事件処理の効率化を図ろうとするものです。
微罪処分が適用できる事件は,できるだけ微罪処分を適用して捜査の事務処理を軽減し,その結果生じた捜査力を他の重要事件などの捜査に振り向けることを目的としています。
簡単に言えば,1つの事件の処理に鬼のような手間と時間がかかるので処理を簡単にして,警察官や検察官の手間を少なくし他の重要な事件の捜査に取り組めるようにする警察官や犯人にとっても簡単な処分ってことです。
被疑者(犯人)の更生を図る目的
軽微な事件を起こしたが再犯のおそれのない者に対しては,事件を送致することなく訓戒程度を与えるにとどめた方が,被疑者の更生が図れる場合がある。
ようするに犯罪を犯すものは悪ではあるが犯人によっては,処分をおもむろに重くするより簡単にする方が効果がある場合があるので,微罪処分にする方が効果を得れることもあるということです。
これらの目的で微罪処分という処分があるのですが警察官の処理を簡単にする為や犯罪者の処分を軽くするという警察や検察側の理由(言いかえれば被疑者や他の重要犯罪の被害者の為でもあるが)が主としているので微罪処分にできる基準や要件は細く決まっている。
微罪処分の基準

被疑者が成人であること
20歳以上であることですので未成年には微罪処分は不可です。未成年は未成年で簡単な処分があります。
被疑者が素行不良者ではないこと
いくら前科がなく犯した犯罪が軽微であってもそれが暴力団員や半グレ集団メンバー,暴走族メンバーでは微罪処分は適用できません。
こんな奴らの処分を軽くする必要なんか絶対にないですし,ほとんどの確率で再犯も犯すのでこれを微罪処分してたら警察も終わりです。
犯罪事実が軽微であること
例えば,夜中に自宅まで帰る足がなく,元の場所に返すつもりで他人の無施錠の自転車を乗って帰ったという事案は軽微にあたります。
一方,鍵の掛かってる自転車の鍵を破壊し,自宅まで乗って帰れば厳密に言えば微罪処分は適用できません。
壊してまで盗むって被害者に対し申し訳ない気持ちはないと判断されるからです。どちらも盗んでることには変わりなく被害者にとっては同じですけど。
通常逮捕,緊急逮捕した事件でないこと
警察官が裁判所から逮捕令状を取得し,逮捕した事件,また現場で緊急逮捕した事件でないことです。緊急逮捕についても逮捕後直ちに逮捕令状を取らなければなりませんので裁判官から逮捕令状を取得するからです。
告訴,告発若しくは自首にかかる事件でないこと
そもそも告訴,告発というのは被害者などが被疑者に犯罪処罰を望んでいるので微罪処分はできません。
罪種及び犯情が指定のものに該当すること
指定のものについて後に記載する要件のところで詳しく説明します。
微罪処分できる要件
・被害額が少なくかつ軽微であること。
・被害品の返還その他の回復がされており,被害者が処罰を希望していないこと。
・素行不良でない者の偶発的犯行であって,再犯の恐れがないこと。
・成人の身柄引受人がいること。
・原則として身元がしっかりしていて住所不定ではないこと。
・特喪の目的である財物が極めて僅少かつ犯情も軽微で,共犯者の全てに再犯の恐れのない初犯者の賭博事件。
・その他,検事正(検察庁の超お偉いさん)が特に指示した特定罪種の事件。
このように微罪処分をできる基準,要件っていうのは細く決まっています。
具体的な被害額がどの程度で僅少化などの点は,その地方ごとの実情に応じて定められていますのでそれが1万円程度なのか2万円程度なのかは,各都道府県により違ってきます。
また偶発的犯行で再犯の恐れがないとありますが判断基準は基本的には前科を調べて,同種の犯罪が過去10年以内に犯していれば微罪処分は適用されません。
同種の犯罪とは『窃盗と窃盗』『窃盗と盗品等譲受』『窃盗と強盗』などのように罪名は違うものの他人の財産を盗むことが共通しているので同種といえます。
例えば,過去10年以内に器物損壊の前科がある人を軽微な窃盗で微罪処分しようとすれば全く違いますので適用できます。
ただし,どこもよく似たものですが各都道府県により適用基準は違います。
微罪処分が適用できる事件

窃盗罪 刑法235条
全ての窃盗が適用できるわけではありません。中種別で変わってきますが空き巣やひったくり,自動車盗などの悪質な窃盗はいくら被害額が軽くても微罪処分はもちろん適用外です。
主に万引きや自転車盗などの被害に微罪処分は適用されます。
詐欺罪 刑法246条
オレオレ詐欺や高齢者を故意に騙すような詐欺にはもちろん適用されません。
微罪処分が適用される詐欺とは,釣り銭詐欺や無銭飲食などといった詐欺の中種別になります。
横領罪 刑法252条〜254条
こちらは,他人が無くした物をそのまま使ったりする遺失物横領や他人が盗まれた物をその犯人が投棄して,それを拾い使用する占有離脱物横領などに主に適用されます。
簡単に言えば,落とした財布の現金を抜き取り使用(それが高額ならダメ)したり,盗まれた自転車が放置してあり,それを乗って帰ったりすることです。
盗品等に関する罪
主な犯罪で言えば盗品等有償(無償)譲受けです。
ただし,もらった本人がその物に対して情があれば微罪処分は適用されません。
情があるとは,その購入した物が盗品であると分かっていたり,疑いがあることです。物が異常に安かったりしたら少しは疑うべきですね。
賭博罪 刑法185条
日本では法律で許されているギャンブル以外は禁止されています。
例えば競馬は競馬法,宝くじは当せん金付証票法,競艇はモーターボート競争法などに定められています。パチンコについては風営法の禁止規定を避けてグレーですが違法性を逃れています。
個人間で定額を賭けてゲームをしたり,野球の勝敗を賭けたりするなど賭博が微罪処分が適用されます。
『ジャンケンでジュースを賭ける』ってみんな1度はやったことありますよね?これは一時の娯楽を供する物なので賭博には該当しませんので安心してください。
暴行罪 刑法208条
暴行でも原則,偶発的な暴行に限ります。
例えば,同僚と口論になり,頬を平手打ちしてしまったとか物を投げつけてしまったなど単純で偶発的なものに限ります。
相手が怪我をすれば,暴行ではなく,傷害ですので微罪処分は適用できません。
以上の6種類が微罪処分の適用できる犯罪になります。ただし,前述にも記載したとおり,微罪処分には適用できる要件がありますので注意が必要です。
微罪処分されれば前科はつくのか?

前科はつきませんが前歴は残ります。
警察に微罪処分された時,警察官から『前科はつかないから』と言われる場合はありますがそれは半分本当で半分間違いです。
きっちりいつ誰がどこで犯罪を起こしたかは全てデータに残りますので前歴は残ります。
なので微罪処分は同じ犯罪で2回はないのです。(10年以上経過していれば別)
じゃあ前科と前歴の違いは?と言われますと
前科とは
逮捕された後,起訴されて裁判所から有罪判決を受けた人が付きます。懲役や禁固刑,その他にも裁判を行わず略式起訴で罰金刑を受けた人も前科はつきます。
罰金刑でも前科はつきますので例えば人身事故を起こしたり,悪質なスピード違反で罰金刑を言い渡されれば前科は残ります。青切符(一般道30キロ未満,自動車専用道路40キロ未満)のスピード違反は行政処分で罰金ではなく反則金ですので大丈夫です。
前歴とは
一方前歴は,逮捕されても不起訴処分になった事件や起訴猶予事件になった事件は前歴がつきます。
このような違いがあり,微罪処分は前歴がつき捜査機関のデータベースには記録が残ります。
微罪処分Q&A

20歳になったばかりの成人が19歳の頃に盗んだ自転車に乗っていて警察に検挙された。
適用される。
微罪処分は犯行時の年齢だけでなく処分時の年齢が適用されるので処理時に20歳であれば微罪処分の適用ができます。
未成年者が婚姻した場合は民法上成人と擬制されるので20歳未満の者であっても微罪処分は可能か?
適用されない。
民法753条では『未成年が結婚した場合は,成人とみなす』と明記されていますが,刑事訴訟法の手続きには該当しないので微罪処分は適用されません。
擬制とは,相異なる事実を法的に同一と見なすことです。
現行犯逮捕された事件
適用できる。
緊急逮捕や通常逮捕された事件でない限りできますので微罪処分はできます。
初めから転売目的で自転車を盗み友人に転売した事件
適用できない。
転売目的であれば,被害額が例え1000円でも犯情が偶発的・軽微な犯行と言えないので適用できません。
ゴミ置場に捨てていた被害届が出ている壊れた自転車を修理して乗っている
適用すべきでない。
もちろん被害届が出ていたことを知っていれば悪ですがそうでなくその捨てられていた状況をよく考慮し,判断されます。
財産的な価値や被害者からの徹底的な聴取を行い状況を明らかにされてから判断されるべき例でこれは微罪処分というより窃盗若しくは占有離脱物横領という罰を適用するかも警察官は慎重にならないといけません。
留学の為に日本滞在中の外国人を微罪処分できるか?
適用できる。
国籍に関係なく要件さえ該当すれば適用されます。ただし,軍人やその家族は被疑者である場合はできません。
もちろんオーバーステイなどの事実があれば微罪処分はできません。
公務員が微罪処分はできるのか
適用できない。
公務員の犯罪を除外する規定は各都道府県によってかわってきますが私がいた地域では微罪処分は適用できませんでした。
規定されているところの趣旨としては,公務員は全体の奉仕者として公共の利益のために職務をおこなうという職務の性格上,あるいは社会的な反響を考慮すると微罪処分は相当でない場合としています。
私の経験でも公務員は何度かありますが印象に残ってるのは若い男を職質したら被害届の出ている自転車で,男は消防士ということが判明しました。
どこで得た知識なのか『俺は消防や。チャリ盗んだぐらい微罪やろ。前科も付かへんから余裕や』と訳の分からないことを言っていましたが公務員なので微罪できませんので普通の基本書式で処理しました。
ムカついたので身柄引受人も家族ではなく消防の上司を呼んでやりましたが上司の人は自分の子供でもないのに『申し訳ありません』と何度も頭を下げ気の毒でした。その後の消防内での処分は不明です。ニュースにもならなかったので。
まとめ
微罪処分について少し理解できたでしょうか?
罪を犯すことはどんな小さな微罪処分になるような罪でも決して犯してはいけませんし,同情はできません。
ただ,微罪処分の目的でもあったように反省し,更生の余地が大いにある人に対して無理に長い時間,身柄を拘束する必要はありませんし,そのような事案処理に長い時間かけるのであれば違う犯罪を1つでも多く捜査し処理した方が他の犯罪の被害者や警察にとっても良いことです。
微罪処分にはいくつか要件があり,
・しっかりと反省している
・身柄引受人がいる
・犯罪が軽微である
などいくつもの要件をクリアしてできる処分です。
微罪処分に限られたことではないですが『しっかりと反省する』というのが一番大切なことです。
もしかしたら犯罪とあまり分からず犯してしまう罪が今後あるかもしれません。日本は法治国家ですのでそれは許されません。でもまともな人間がそれだけで積み上げてきた人生,今後の人生が全てがパーになる必要はないと私は思います。
微罪処分という警察で終わる処分があるということを知っておくだけでこの記事を読んでくれている人達がもし何らかの罪で検挙された場合,警察への対応,精神的ダメージはかなり変わってくると思います。
最後に何度も言いますがいくら軽微な犯罪でも罪は罪です。被害者も必ずいます。犯罪を犯すことは絶対にあってはならないことです。
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